戻る  ■ HAPPY × HAPPY ... July

 くるり、と一回転する。
「ん。感想は?」
「……よく持ってたなぁそんなの……」
 得意げに訊いてくるリナに、ガウリイがのほほんと応える。
 せっかく七夕で。町はちょっとしたお祭りで。
 付き合っている彼女が、とっておきの浴衣を着たというのに、だ。
「かーちゃんが送ってくれたのよ。……じゃなくてっ。
 似合うなぁ、とか! かわいいなぁ、とか! ないの!?」
 軽く頬をふくらませて、拗ねたようにリナが言う。
 ガウリイは相変わらずのほほんとしたまま、
「おう、可愛いぞ。その浴衣」
「なんで浴衣限定なのよっ」
 返った言葉に、すぱんっ、と彼をスリッパではたき、リナはますますむくれて背を向けた。
 苦笑して、ガウリイが後ろからリナを抱き締める。
「冗談だって。似合ってる似合ってる」
「……どぉせ中身はちっともカワイクないわよ」
「中身もちゃんと可愛いって」
 頬をふくらませたままの少女をなだめつつ、その髪に口付ける。
「今ごろ言ったって遅いわよ、ばか」
「本当に悪かったって。機嫌直してくれよ」
「んじゃ、夜店の食べ物はガウリイのおごり決定ね♪」
 言いながら、ようやくリナの表情がやわらぐ。
 対するガウリイは、わずかに眉をひそめた。
「祭り……行くのか?」
「行かないの?」
 予想外の反応に、リナは訝しげにガウリイを見る。
 いつもの流れならば、リナの言葉に苦笑を浮かべてOKしてくれるのだけれど。
 彼は気が進まない様子で、言葉を続けた。
「……その格好で?」
「当たり前じゃない。そのために着たんだから」
 ガウリイから離れ、両手を腰にあててリナが言う。
「……行くのやめないか?」
「どーしてよ?
 そりゃ雨降りそうな天気だけど、降る前には帰ってこられるわよ」
 再び彼女の機嫌が悪くなってくる。
「まぁ、天気のこともあるけどな……」
 ガウリイは小さく息を吐くと、リナの腕を引っ張った。
「あきゃ!?」
 ぽふっ、と、もう一度彼女の身体がガウリイの腕の中に収まる。
 次いで、リナが抗議するよりも先に、その口を唇で塞いだ。
「……っふぁ……」
 しばらくしてから放す。
 そのまま、吐息を漏らす彼女の首筋に口付けて。
「ちょ、ガウリ……話の途中っ……」
 首を竦めながら、リナが吐息に言葉を混じらせる。
 かまわず彼は耳元まで唇を這わせて――
「――――――」
 キスのあいだに、ぼそり、と呟いた。
「……え?」
 瞬間、聞き取った言葉に、リナは顔を赤らめた。

「――他の奴に。見せたくないんだよ」

 耳に口付けられたまま、囁くように繰り返される。
「………………」
 言葉を返そうとして口を開いたリナは、けれど何も言えなかった。
 頬が火照る。
「だから――行くのやめないか?」
 耳から唇を離し、それでも彼女の身体は抱き締めたままで、ガウリイが言葉を続ける。
「…………最初からっ、……そう、言いなさいよ……っ、ばかっ」
 顔を伏せ、ようやくそれだけ口にするリナ。
「……そうなるから言わなかったんだよ」
 彼女の髪を撫でながら、ガウリイは笑った。


「ねえ」
「ん?」
 窓から見える空に視線を向け、ふとリナが呟く。
 先程まで遠くから聞こえていた喧燥は、今はもう雨音に消されている。
「七夕って、だいたい曇りとか雨よね」
「そうだっけ?」
「……そうだった気がする」
「けど七夕ってあれだろ、別れ別れの、何とかいう……」
「織姫と彦星?」
「そうそう。そいつらが年に一度逢える日なんだろ?」
「まぁ、そーいうことらしいわね」
「だから曇りや雨が多いんじゃないのか?」
「……なんで?」
「やっぱ二人だけで逢いたいんだろ。誰にも見られないように」
「……そう、かもね」
 視線が絡む。
 ガウリイの手が、リナの頬と髪に触れる。

「――もう一度、いいか?」
「だからしわになるからヤダってゆってんじゃない」
「気をつけるって」
「……っとに、もう……」
 短く息を吐いて。
 リナは、目の前の彼に手を伸ばした。
 ガウリイの唇が降りてくる。
 抱き締めて、想いを重ねた。

 今夜は、きっと特別。


■ Comment ...

久々のガウリナ現代版もどき。七夕編でス。
毎年毎年書きたいと思いつつタイミングを逃して、ようやくUPできました。はふう。

なんてーか、そこはかとなくアダルト風味。
まぁ、最初からそういう関係の二人なのですけれども。
書きたかったのは浴衣着たリナとそれを見たガウリイのやりとり。
後半のいちゃいちゃはぼかしてみたり。
お約束と見るか膝枕と見るかはお好きなほうで(笑)

ちなみに前二作が一人称だったことを思い出したのは書き終わってからでした(…)
書き直そうかとも思ったんだけどもったいないのでそのままUP。


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