| 戻る | ■ HAPPY × HAPPY ... March |
|
「ほい、リナ」 「うぇぇ!? ガウリイ、よく覚えてたわねー」 「あのなぁ……」 3・14――ホワイトデー。 思わず上げたあたしのことばに、なぜだかガウリイは不満そうな顔をした。 「だーってあんたクラゲなんだもん。てっきり忘れてるかと思ったわ」 「別にオレだって覚えてることくらい……」 ぶつぶつ言ってるガウリイはほっといて、あたしは彼のくれた小さな包みをがさがさと開けはじめる。 出て来たのは、白くって小さい、ふあふあしたマシュマロだった。 「他にもいろいろあったんだけどな、何か美味そうだったから」 「……て、ガウリイが食べるわけじゃないでしょーが」 「ああ? いいだろちょっとくらいくれても」 苦笑するあたしに、ガウリイは情けない声を出す。 「……でも意外。ガウリイ、あたしのこときらいだったのね?」 「は?」 笑みを含んで言うあたしに、ガウリイは面食らったように聞き返した。 「だってそうでしょ? マシュマロって、『きらい』って意味なのよ?」 「そうなのか!?」 「クッキーだと『好き』で、アメだと『友達』かな。知らなかった?」 「……知らなかった」 あたしのことばに呟いて、そのまま黙り込んでしまう。 ……ちょっとからかいすぎたかな。 小さく笑って、あたしはガウリイの顔を覗き込んだ。 「うそうそ、冗談。別に決まってないってば」 「へ?」 顔を上げて、真っ直ぐにあたしを見てくる。 ――大好きな、蒼い瞳。 「まぁ、好きとか友達とかきらいとか、意味があるって聞いた覚えもあるけど、正確なことは知らないわよ。 それとも何? ホントにあたしのこときらいなわけ?」 「そんなわけないだろ」 迷いのない即答。 ……ちょっと、嬉しいかも。 「じゃあ、からかってたのか?」 「たまにはいいでしょ。いっつもいぢわるされてるからお返しよ」 言いつつ、舌を出すあたしを、ガウリイが、ぎゅっ、と抱き締めてくる。 「あのなぁ。本気で焦ったんだぞ?」 「あはは。ごめんてば」 「それに、意地悪ったってリナが可愛いからだぞ」 うあ。 「……て、照れるよーなことさらっと言わないでよばかっ」 「ホントなんだから仕方ないだろ」 恥ずかしくなってもがくあたしを、逃がすまいとするガウリイ。 「……ん」 唇にガウリイを感じて、あたしはもがくのをやめた。 ◇ 「……ね、ガウリイ」 「ん?」 腕の中で小さく呼びかけてきたリナに、オレはその顔を覗き込んだ。 「ちゃんと他の女の子にもお返しした?」 「なんで?」 「……いっぱいもらってたじゃない」 「そーだなー、それでリナ拗ねちまったんだよな?」 「なっ、なんでそーなるのよっ!? 別にあたしはっっ」 「してないよ」 「……え?」 「ちゃんと返すのはリナにだけな」 「……単に誰からもらったか覚えてないだけでしょ」 「お前なぁ……」 苦笑して、オレは少し力を込めてリナを抱き締める。 「リナだけ特別なんだよ」 耳元で囁いてやると、一瞬、リナの身体が強張った。 そのまま、顔が赤らんでいく。 「……ホントに、可愛いよなぁお前さん」 「知らない!」 するりとオレの腕の中から抜け出して、背中を向けてしまう。 照れて怒っているその少女が、愛しくてしょうがない。 「なぁ」 「…………」 「リナってば」 「……何よ」 「食べてもいいか?」 テーブルの上に広げたマシュマロを一つつまんで、そう訊ねると、 「……バレンタインのときも勝手に食べたくせに」 「いいだろ別に」 甘く睨みつけてきたリナの唇に、マシュマロを押し込んでやる。 「…………よくない」 ぽつりと呟いて、拗ねたような表情で、それを飲み込む。 そんな彼女にオレは苦笑して、自分も一つ口に含む。 「甘いな」 「そ?」 テーブルの上に手を伸ばして、リナは続けて二つ三つと口に運ぶ。 オレはその手をつかまえて、ゆるく引っ張る。 抵抗する気がなかったか、すんなり彼女はオレの腕の中に収まって、そのままキスを受け止めてくれる。 照れてるのは相変わらずなんだろうが、もう逃げようとする気はないらしい。 「……やっぱ甘いよな」 「ばか。どっちの甘さかわかんないじゃない」 唇を離してそう言うと、少しだけ顔を赤くして、リナが応える。 「……なぁ」 「何?」 「今日やけに素直だなお前さん」 「……たまにはね……」 微笑んで、リナのほうから口付けてくる。 深く受け止めて、抱き締めたまま、オレは優しく髪を撫ぜた。 ◇ 「結局食べられちゃうのよね。ホントは女の子のほうがお返しにもらう日のハズなのに」 マシュマロの入ってた包み紙を片付けつつ、あたしは、ぽそりと言った。 「ちょっとしか食ってないだろ?」 ベッドの上に座ったまま、苦笑して応えるガウリイ。 「何言ってんのよ。あたしが食べてる分まで食べちゃったくせに」 「そりゃ美味かったからな」 「……どっちが?」 「どっちも」 肩越しに振り向いたあたしに、ガウリイの唇が触れる。 「……ホントに、何の日だったんだかわかんないじゃないのよ」 「いいんじゃないか? リナも充分食べただろ?」 ばふ。 にっこり笑って言う彼に、あたしはなんだか恥ずかしくなって手近にあったクッションをガウリイの顔に押し付けた。 「何すんだよリナ?」 「うっさいっ。もー、自分の部屋に帰ってよっ」 ガウリイの背中をぐいぐい押して、部屋の外まで追い出す。 「はいはい。んじゃまたな」 「んく」 ドアを閉める直前に、軽くキスされる。 そのままドアが閉まって、あたしはずるずるとその場に座り込んだ。 顔が熱い。――なんかくやしい。 結局、いっつもガウリイに勝てないんだから。 |
| ■ Comment ... ガウリナ現代版もどき・ホワイトデー編。 全文深読みして下さると全体的に甘いかと(笑)
途中で視点がリナからガウリイになってまた戻ってとかなってますね。
お返しのモノによって意味が違う、というのは聞いたことがあるだけで、全部てきとーです。 |
| 戻る |