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がたがたと小さく窓が揺れる。 外から聞こえてくるのは、激しい雨と風の音。 くわえて、ときおり轟く雷鳴と稲光。 やかましさフルコースの中、あたしはふとんにもぐって丸まっていた。 ……んにゅう……眠れなひ…… けっして雷が恐くてだとかそういうことではないのだが。 旅の途中で寄った小さな町。 かろうじて一軒のみやっていた宿屋で部屋をとったのはいいものの、あまり利用されていないのか、宿の雰囲気は寂れまくっていた。 もちろん、それはたった三部屋しかない客室とて同じこと。 歩けば、ぎしぎしとやかましい床。 おせじにもりっぱとは言えない古い木造のベッド。 ちょっとちからを入れて壁でも叩こうものならすぐに穴でもあきそうなほどぼろっちい部屋だったのだ。 そこに、夜更けから降り出した雷雨に暴風である。 野宿よりはマシとはいえ――建物がいつ潰れてもおかしくないこの状況。 音がやかましいのもあるのだが、なによりそこが気になってなかなか眠くならない。 「むうう……」 小さくうなるあたし。 と。 ぎ、ぎ…… 風雨の音に混じって、かすかに聞こえる、床のきしみ。 聞こえたのはすぐ近く。 気のせいでなければ、壁の向こう――となりの部屋。 「――リナ」 あたしがベッドから身体を起こして壁に耳を近づけると、聞き慣れた声がした。 となりの部屋で寝ているはずの彼の声。 「ガウリイ……?」 「あ、やっぱ起きてたか」 名前を呼ぶと、壁の向こうで言葉が続く。 どうやらこの宿屋、本気で壁が薄っぺらいようである。 「なに、どうかしたの?」 肩からふとんを被ったまま、ベッドの上で壁のそばに座り込むあたし。 「いや……眠れないんでな。 なんとなくリナも起きてるような気がしたから」 彼の声に重なるように、がたんっ、と窓が大きく音を立てた。 雷鳴はおさまったようだが、まだ風は強いらしい。 「うん。まあ、この嵐だし」 返事して、壁に寄りかかる。 「眠れそうか?」 「……ん、わかんないけど」 なんだろう。 声がすぐ耳元で聞こえてるかのように思えて、あたしは首をすくめた。 ガウリイも、壁に寄りかかってるのかもしんない。 なんか変な感じ…… 「こういう嵐のときってのはさ」 「うん?」 「なんか心細くならないか? 一人でいると」 言われて、苦笑するあたし。 「あんたね。あたしがそんな奴に見える?」 「……リナはならないか」 彼も苦笑したのか、声のトーンがすこし下がる。 いきなしなにを言い出すんだか。 「当然でしょ」 「すまん。オレが、……」 「え?」 おさまったと思っていた雷鳴が、突然大きく響いて。 あたしは、ガウリイの言葉を聞き取れなかった。 「ガウリイごめん、なんて言ったの?」 「――――」 続く雷の音に混じって、わずかに声がする。 だめだ、わかんない…… あたしは壁に耳をつけた。 「聞こえないんだってば、ガウリイ」 そう声を強くしたとき、ようやく雷鳴が小さくなる。 が、彼からの返事は来ない。 「ガウリイ?」 名前を呼ぶと、しばし間があって。 「――こっち来るか?」 つぶやくように、そう言葉が返った。 ………… 今度はあたしが黙り込む。 え、ええっと。 深い――意味は、ない――とは思う、けど…… それでも、ほんのすこし、体温が上がってしまったような気がする。 返す言葉に迷っていると、再びガウリイの声が聞こえた。 「来たくなければ別にいいんだぞ。 もう少し――傍で、しゃべりたかっただけだ」 あたしは、断りの言葉を口にした―― ――かもしれない。普段なら。 なぜか、このときあたしはそれをためらった。 よくわからないけれど、なにかが心にひっかかる。 がたりと、風が窓を揺らす。 ……ええい、もう。 二、三度、首を振ると、あたしはベッドから降りた。 |
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