――ガウリイの傍で眠るのは嫌いじゃない。
今日は野宿。
「あたし野宿はキライなのよ。冷えるし寝心地悪いし」
「仕方ないだろ。無理して歩いてっても、町に着くの明日の昼前ってリナがさっき」
「わかってるわよ、単にアンタにやつあたりしてるだけよ」
「ひでえなあ」
苦笑したまま、ガウリイはあたしが投げる小石を全部手で受け止めてる。
野宿によさそうな場所を見つけたのはいいけど、寝てしまうにはまだちょっと早いし、周りは木ばっかりで何もすることがないんでさっきからこうしてるわけ。
いい加減、石を投げるのにも飽きたので、あたしはすぐ近くの木にもたれかかった。
さすがに毛布に包まってても震えるほどじゃないけど、まだ少し夜はさむい。
――焚き木のはぜる音。
いつのまにかガウリイはとなりに座っていて。
でもそれはもうあたりまえのことで。
「……リナ?」
「…………このほうがあったかいんだもん」
あたしはすぐ傍にあった腕に抱き付いて、寄りかかった。
二、三度、大きな手があたしの髪をなでる。
目を閉じた。
――ガウリイしか感じない。
「ん、ん……っ」
両手を、ガウリイの片手で一度に押さえ付けられた。
背中に木の感触。肌にガウリイが口付けてくる。
この格好、木に縛り付けられてるみたいで嫌なんだけど。
なんだけど、抵抗ができない。
どうでもいい、ような気がしてくる。
やだな。馴れたんだろうか。
……ガウリイが触れてるせいだ。
「リナ?」
呼ばれて、あたしは閉じてた目を開けた。
すぐ傍にガウリイの顔。
もう一度目を閉じる。――唇が触れた。
身体の芯が疼く。
しばらく、触れてるだけ。
放された両手を、ガウリイの背中にまわして。
抱き付く。抱き締められる。
触れるだけのキス。
「今日はおとなしいな」
首すじに口付けながら、ガウリイが言う。
「今日ってなによ。そんないつも暴れてるわけじゃ」
「外はやだ、って逃げるだろ」
応えようとして、唇を塞がれる。
「……ん」
唇の隙間から舌が滑り込んでくる。
擦り付けて、絡めて、あたしは両手でガウリイの頭を抱え込む。
一度離す。
……至近距離。すぐまた触れられる距離。
泣きそうになるのはどうしてだろう。
強く口付けられた。
強く抱き締められて。
やっとなにかが満たされる。
声にならない。
ただ熱のある吐息を繰り返して。
しがみついて。
どうにもならなくて。
受け止めるだけで精一杯。
抱かれるほど想いが熱に変わる――
肩に毛布がかかる。
だいぶ呼吸が整って。
なんとなく離れないまま、あたしはガウリイに抱き付いてる。
ぽふ、とガウリイの腕に顔をうずめてみた。
「……ガウリイ」
「ん?」
やさしい声で、きっと笑顔で、あたしの髪をなでる。ガウリイ。
ガウリイ、ガウリイ、ガウリイ。
「……なんでもない」
「そっか」
ことばにならない。ことばにできない。
落ち着かない。
両腕をガウリイの背中にまわして、もっと近くに感じたくなった。
抱き締め返してくれる強い腕。
もうだいぶ慣れたけど、でもちょっとくすぐったくて、恥ずかしくて、それから。
――あったかい。
今日はふかふかのおふとん。
でもガウリイの腕の中にいるのはおんなじ。
ゆるく髪をなでられるのもいっしょで。
「ね、ガウリイ」
「どした?」
呼んだら返って来る笑顔も変わらずにやさしくて。
でも今日は昨日よりちょっとだけ距離が近くなる。
きっと、明日はもっと。
「……あのね?」
「うん?」
すきだよ。